家族承諾による脳死臓器3例目

▼7月に改正臓器移植法が施行されてからもう3例目らしい(合計で89例目)。2ヶ月で3例。ペースが早い気がするが、どうだろうか。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100822-00000279-yom-soci

1997年に旧臓器移植法が施行されてから、改正臓器移植法が施行される2010年までに86例行われた計算になる。とすると、今までは概算で1年当たり86÷13=7例ペースだったわけか。一転、改正後はこのままのペースでいくと1年当たり18例ペースとなる。

やはり概算ではあれど、脳死臓器移植のペースは早まったとは言えそう。それをよしとするか否かは論者次第ではあるが、世間的にはよしとする人が多いのだろう。


▼ついでに、改正臓器移植法について思うことを。改正点としては、1.オプトアウト方式(本人が拒否の意思を示していない限り、臓器提供に同意したとみなす)への変更、2.年齢制限撤廃、3.親族優先提供の追加、が挙げられる*1

1と3は矛盾する方向性を持つ。1は、本人の自己決定を弱める方向性を持ち、死後の臓器を共有物とみなす節がある。一方、3は、本人の自己決定を強める方向性を持つ。死後の臓器の用途でさえも(部分的に)決定できる権限を認めた。その根拠は、やはり自分の身体は自分のものだという自己所有権があるだろう。

もともと身体というものは特殊なものである。人格の一部でありながら、物でもある世界中で唯一の存在である。とすると、ある程度の矛盾を内包するのは当然と言えなくもない。あるいは、はたまた、一貫した論理が必要なのか。

*1:脳死が一律に人の死になった」とよく謳われるが、提供拒否の意思を示している限りは法的脳死判定は行われない(「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン))。法的脳死判定が行われない限りは脳死になることもないわけで。とすると、提供拒否者の死の基準は従来通り心停止ということになるはず。ならば、一律の死とは言えないということになる。