生命倫理学

カス『治療を超えて』 その1

第3章 優れたパフォーマンス を読む。これも講義で扱っているのでちょっとずつ感想を書いていく。50頁くらい分量があるけど、内容としては、一言で言える程度のもの。(ある種のバイオテクノロジーのような)人間性や尊厳を冒すようなことはしないようにしよ…

サンデル『完全な人間を目指さなくてもよい理由』 その1

サンデル(2010)(林芳紀他訳)『完全な人間を目指さなくてもよい理由』ナカニシヤ出版 を授業で読んでいるので、ちょっとずつ感想を書いていく。アメリカで聾の親が聾の子供を作ろうとする話が物議を醸した話から入って、身長・記憶力・性選択・筋力増強に…

尊厳っていったいなんなんだよ・・・

人間の尊厳、生命の尊厳、人体の尊厳。尊厳、尊厳って、いったい尊厳ってなんなんだよ・・・。「尊厳がある」=「尊厳があってほしい」っていうことじゃないの?違うのか?だとしたら、なんで尊厳だけ自明視されるんだよ。おかしいじゃないかよ。いったい尊…

家族承諾による脳死臓器3例目

▼7月に改正臓器移植法が施行されてからもう3例目らしい(合計で89例目)。2ヶ月で3例。ペースが早い気がするが、どうだろうか。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100822-00000279-yom-soci1997年に旧臓器移植法が施行されてから、改正臓器移植法が施行さ…

不公平だなって思う

▼ある一人の人の人生を考えてみる。1.彼は生を与えられる。これは明らかに彼にとって快楽ではないだろう。ひょっとすると苦痛かもしれない。当然選好もない。彼にとって、誕生は明らかな善とは言えない(功利主義的に考えて)。2.彼は死ぬ。これはおそら…

村上喜良『基礎から学ぶ生命倫理学』

村上喜良(2008)『基礎から学ぶ生命倫理学』勁草書房扱っている対象自体は一般的な生命倫理学の教科書と同じで良いのではないかと。ただ、主張の根拠づけのところで首を傾げたくなることが多い印象。 例えば、中絶におけるトムソンの思考実験の話で、 トム…

小松・香川編『メタバイオエシックスの構築へ』

小松美彦・香川知晶編(2010)『メタバイオエシックスの構築へ』NTT出版 よくできた論文集だと思う。廣野さん、香川さん、田中(智)さんの章は個人的に特に印象に残った。機会があれば章ごとに詳しく検討してみたいところ。一読して疑問に思ったのは、果…

ホープ『一冊でわかる医療倫理』

トニー・ホープ、赤林朗・児玉聡訳(2007)『一冊でわかる医療倫理』岩波書店 これはまぁだいぶ日本における生命倫理学の概説書とは趣が違う本だなぁ。学問は「対象」か「方法」か云々という話を以前したけども*1、この本はだいぶ「方法」について詳しい。こ…

今井道夫『生命倫理学入門』

今井道夫(2005)『生命倫理学入門(第2版)』産業図書 「生命倫理学をやる」と宣言していながら、あまりに無知なので生命倫理学の教科書的なものを読んでいくことにする。 これは生命倫理学の全くの初心者・初学者向きかな。基礎的な事項がサラーっと右から…

トゥーリー「嬰児は人格を持つか」

トゥーリー「嬰児は人格を持つか、加藤尚武・飯田亘之編(1988)『バイオエシックスの基礎』東海大学出版会、読む。元はTooley, M.,1972,"Abortion and infanticide," Philosophy & Public Affairs 2(1): 37-65. なお、翌年の同名の著書でだいぶ主張を変更し…