小松・香川編『メタバイオエシックスの構築へ』


小松美彦・香川知晶編(2010)『メタバイオエシックスの構築へ』NTT出版


よくできた論文集だと思う。廣野さん、香川さん、田中(智)さんの章は個人的に特に印象に残った。

機会があれば章ごとに詳しく検討してみたいところ。一読して疑問に思ったのは、果たして著者らの試みが「『メタ』バイオエシックス」と称されるべきなのだろうか、という点。メタと言うからには、従来のバイオエシックスに比べて階層の違いが必要なわけだが、どうもそこまでの間隙は伺えない。

むしろ、バイオエシックスが医療倫理の枠内に戻ってしまいつつある現状で、グローバル性という原点を再認識しよう(廣野論文)であるとか、従来のバイオエシックスの核である原則主義に対して批判が強まってきていることを意識しよう(香川論文)であるとか、あくまで今まで論じられて来た中で提示されたバイオエシックス像の中でどれを志向するべきか、といった趣旨に見受けられる面も大きい。『バイオエシックスの批判的検討』くらいが妥当なところではなかろうか。


スーエロ的な観点から見ると興味深い論点もいろいろあった。病み衰えた人間には、死ぬ義務があるのだろうか、死ぬのがスーパーエロゲーション(義務ではないが善行)なのだろうか、あるいは義務でも善行でもないのだろうか。cf.ハードウィッグ→読まなきゃね。